(10日)心も身体も少し回復

  • 私は風邪を薬で誤魔化して、午後から故・向井俊彦立命館大学教授を「偲ぶ会」に出席した(at京大会館)。今年5月の急逝は大変驚いたが、今日の偲ぶ会で、先生の豊富な人間関係や学問的な位置が少しうかがえた。
  • 改めて分かったのは、向井先生の50代以降が「寡作」に見える理由である。向井先生の30歳代は、ヘーゲル研究でも唯物論研究でも、鋭い問題提起の論文を連発されていた時代であった。だからこそ、晩年の執筆状況がいかにも「残念」という印象を与える事になる。結局単著は70年代の唯物論ヘーゲル研究』文理閣刊)一冊となった。私が立命に入学した頃、すでにその本は「伝説」化していて、周囲が「次」を待ち望みながらも、なかなか出版される様子がない、という状態だったと記憶している。
  • 私は立命館2部文学部の学生時代、合計3年、向井先生の一般教養科目を履修した。1年目、2年目は単位取得のため、3年目はもぐりで履修した。私が向井先生の講義を聴いていなければ、おそらく大学院の進学は考えなかっただろう。それだけ、私にとっては決定的な受講経験だった。
  • 嬉しかったのは、今日の会場に来ていた学生たちが、向井先生の著書やゼミで、先生の指導を受け、その研究を継いでいこうとする学生たちだったことだ。私たちの時代で死滅(苦笑)してしまったのではないかと心配していたのだが、そのような心配は無用だという事を知った。
  • 懇親会会場で麻生潤先生(同志社大学商学部助教授)にご挨拶させていただいた。私は立命時代に所属していた社会科学研究会で、当時大学院生?だった麻生先生からサークルメンバーにマルクス経済学の指導をしていただいた思い出がある。先生の妹さんが当時、サークルの代表を務めていた。私が後にヘーゲル研究を専門にして大学院で研究する際、当時のマルクス経済学の基礎知識はずいぶんと役に立った。「マルクスヘーゲルの論理をこう見た」という知識を得る事ができているのは、研究の上で大きな財産だと考えている。
  • 会場で、大学院のゼミの大先輩である上田浩先生から新刊書『価値と倫理』文理閣刊)を特別に頂戴する。いと有り難し。さっそく帰り道に読みつつ、私の講義で参考資料として利用させてもらえそうな箇所を探した。
  • ということで、風邪も治ったわけではないが、精神的には大変充実した一日になった。市販の風邪薬のイブプロフェンが効いている間(私はこの薬効成分で気分が高揚するようだ)に、身体を誤魔化しつつ、水曜日の準備に取りかかりたい。