(symposium)「性差科学の最前線」

  • 21日は大阪薬大の講義後に直接、京都大学へ。「性差科学の最前線」というシンポジウム出席。講演は長谷川眞理子総合研究大学院大学教授)「性差の起源を探る:生物学的性差と社会」、大隅典子(東北大学大学院医学系研究科教授)「認知機能の性差」。
  • 長谷川氏はジェンダー論研究者相手の講演に慣れておられる様子なのに対し、大隅氏は必ずしもそうではなく、内容的にも言葉遣い的にも質問者の「集中砲火」を浴びてしまった。ただそれは、脳科学の研究成果を「ジェンダー論」の立場で解読することの重要性を参加者が認識する良い契機になった。
  • 生物としての「雌雄」の差異を語る延長線上で人間の「男女」の差異を論じることの難しさと「危険性」、またそれを「研究したい」と欲する(それはおそらく専業主婦の母の元で育ち、「妻」を専業主婦にさせている男性研究者)の「研究意図」の問題など、大隅氏のスライド内容は、(半分「反面教師」的でもあるが)勉強になった。
  • 「理系の女性研究者」であれば多かれ少なかれ、即自的に「女性研究者に降りかかるバイアス」を意識する存在にさせられるが、しかしながら必ずしもそれが過去の研究成果(今回ならば認知機能など)の内部に潜む「ジェンダー」を意識することにつながるとは限らない。考えてみれば当然かもしれないが、そんなことも感じたシンポだった。
  • 私が毎年担当する「女性学」の受講生は全員、薬学部生でもある。今年の講義でも、この「性差」問題は賛否両論、激しく意見が飛び交った。百数十人も受講していれば、必ず数人は「男は男らしく」を言い出す学生がいる。来年度の講義内容に活かしていきたい。可能ならば、一限まるまる使って「性差を考える」時間にしてもいいと考えている。