(12/16,TV)思い出した冬のアルバムと、「ワーキングプア」

  • 話は変わる。冬に聞いた懐かしいミュージシャンのアルバムは、皆さんは何だろうか。私の頭に二枚浮かんだ。まず佐野元春の「Cafe bohemia」、そしてレベッカの「Time」だった。どうしてこの二枚が?と自分でも不思議だったのだが、ウィキで発売日を調べたら二つとも同時期(1986年秋〜冬)に出ていることが分かった。私が人生の中で一番鬱屈した日々を過ごしていた時期。そして、一番人と接することのない頃でもあった。たぶん、毎日CDばかり聞いていたのだろう。それしかやることがなかったのかもしれない。私の記憶では、この前年までシングルは「レコード」で買ったはずである。この頃は過渡期で、各メーカーがレコードとCDを両方発売することはそれほど珍しいことではなかった。アルバムによっては「テープ」版も同時発売されていた時期である。だから、最新メディアの「CD」を、買ったばかりのポータブル・プレーヤーで毎日聞いていたのだろう。自分の人生はどうなるんだろう、と不安に怯えながら。
  • 私が当時やっていたバイトは新聞配達だけで、大学へ行く気力もなく、これからの人生を描くことができずにいた。翌年、私の知り合いの年配の男性の、その知り合いであったある出版社の社長(私の実家と社長のご自宅は近所だった)から、R大学の入学願書をプレゼントされる。その社長(女性)も、その大学の出身者であった。その大学に入学することで、私の人生は大きく転換することになる。私は衣笠で人生の立て直しを始めたのだった。
  • 夜に見たNHKスペシャルワーキングプア3」には、ホームレスの青年のその後を取材した映像が登場した。家族崩壊と人間不信は、誰の身にも降りかかりうる。それが生きがいを失わせ、社会の最底辺を彷徨わせることになる。働いても貧困から抜け出せない、そもそも貧困から抜け出す機会さえない者は心まで蝕まれていく。「転落者」を突き放すのは勝者の論理である。希望は心を温める。希望を提供するのは社会の仕事であって、それを個人の善意に任せるのは限界がある。日本は限界を既に超えつつある。NHKが思い切って政府の貧困対策の遅れを告発したドキュメンタリーの第三弾だった。
  • 私が二枚のアルバムを思い出したのは、当時の私が寒さに震えながらも、声やメロディに癒されていたからかもしれない。元春やNOKKOに心を支えられていた。