(7/5)人生には何度か虚無に襲われることがある

  • ふと、何処かの国のある刑務所(捕虜収容所?)の話を思い出した。看守が囚人に仕事を命じる。広場の一角に穴を掘れという。囚人たちは炎天下の中、穴を掘り続ける。ようやく出来上がった穴を、今度は埋めろという。また囚人たちは埋めていく。翌朝、看守はまた同じ場所の穴を掘れと命じる。囚人たちが作業を渋ると容赦ない制裁を受ける。仕方なく囚人たちは穴を掘り始める。そして案の定、人が入れるほどの穴ができたら、看守はその穴を埋めろと命じる。いつまで続くのか、この永遠の繰り返しは。看守はもしかすると、自分が以前に穴を掘れと命じたことを覚えていないのではないか?いや、そんなことはない。彼にも記憶は残っているはずだ。でも、地面に穴を掘った跡が残っているじゃないか。それが看守には見えないのか?いや、見えているか見えていないかは、看守にとってはどうでもいいことなのかもしれない。たとえば囚人が「土の色が違う」ことを看守に指摘することなど、できるはずもないじゃないか。また制裁を受けたいのか?黙っておけばいい。永遠に閉じ込められているわけじゃないんだから。皆が皆、本音を言うわけじゃない。そんなことぐらい、看守も分かっているだろう。力関係で上に立つ者ほど、自分が上に立っていることの恐ろしい意味を分かっていないものだ。この刑務所を出たら、人に優しくなれるだろう。それだけでも、よかったじゃないか。