オバマ大統領就任式と、「物語」の効用

  • CNNとNHK総合をダブル録画しながら生で見た。今回は歴史上特別な大統領就任式だったというのもあるだろうが、あの映像を見ていると「アメリカってセレモニーが好きだなあ」と、つくづく感じた。感動を演出するのが大好きなんだろうな、とも思った。まさに「まつりごと」だな、という感じで。
  • 夕刊各紙に出ていた就任式の演説全文を読んだ。リンカーンローズヴェルトルーズベルト)、ケネディキング牧師らを想起させる言い回しを使い、今日がまさに彼とアメリカの「物語」のスタートであることを印象づけた。
  • 現代とは「物語」の崩壊の時代、であったはずだった。時代の進展が進歩の保障であるという物語の崩壊。汗水たらして働けばいつか必ず報われるという物語の崩壊。だが、アメリカでは今、新たな「物語」が紡がれようとしている。その「物語」は、政治にとって最も重要なのは「希望」であるということを思い出させてくれる。逆に「物語の不在」は、現在の苦痛に耐える気力を奪い、人々は現状だけでも維持しようと後ろ向きになる。それでは社会の活力が失われてしまう。つまり、「物語」のない政治は庶民に希望をもたらさない。たとえば、「責任ある政治」のために増税を公言する内閣、「財政再建団体」に転落してもいいのかと恫喝する大阪。
  • アメリカが日本よりも経済の破綻が深刻なのは分かっている。貧富の差も、差別も深刻なのは分かっている。それでもなお、その国のリーダーは「希望」を説いている。このこと自体に計り知れない意義があると、私は思う。少なくとも、その国民の多くはその「物語」の実現のために協力しようという気持ちになるだろう。