越智道雄・町山智浩『オバマショック』(集英社新書)

  • 読了した。各章興味深い考察の連続だったが、特に面白いのは第五章以降だった。オバマという人物が「過去が無い」という意味や、「宇宙人(スーパーマン)」や「弥勒菩薩」になぞらえるくだりは、彼がアメリカ国内でどういうアイデンティティを持って生きてきたか、またアメリカ国民(特に黒人)にとってどういう人物だと思われているかがよく分かる例えだった。政治体制や、「自由」「平等」といった概念の捉え方などは私と意見を異にする箇所もあったが、「アメリカ人たちがそのような意味で捉えてきた」という事であれば間違っていないのかもしれない。今、「オバマ関連」の本が書店にたくさん並んでいるが、たった一冊の新書で、ここまでアメリカ政治史や文化史と、現在のアメリカの現象をリンクして説明できている本は他に無いのではないだろうか。
  • 大学生には無知な政治認識をフォローするために、社会人には世界情勢の統一的な理解のために、アメリカ(特にアメリカ映画)に関心の高い高校生でも読めるのではないだろうか。学校の教科書に書かれていないアメリカの実像が、これでもかと出てくるから、空虚な幻想を若いうちに打ち砕いておき、リアルなアメリカに注目するのも大事だと思う。