「赤塚論」華やかなるも、しかし

  • 夜、ETV特集「全身漫画家 真説・赤塚不二夫論」を見る。いくつか新しい証言者の証言は加わっていたが、全体としてこれまでNHKで放送してきた「赤塚像」に大きな変化はなかった。
  • 死人に鞭を打たない日本の文化の影響なのか、赤塚が「漫画家としてダメになっていった過程」についての言及が少なく、また彼を「漫画家としてダメにしていった交友関係」にも触れていない。まだまだ等身大の作家論が見えてこない。マンガ作品に対する評価と漫画家個人の魅力を同一視するのは、判断を誤らせる危険がある。何度も似顔絵や写真で、また武居記者も名を挙げていた長年のブレーン「長谷邦夫」氏(宇都宮在住。現在も全国の大学や専門学校でマンガ論や実技の非常勤講師として教鞭を執る)に、こういう番組で欠落している重要な部分を語っていただく他はないのではないか。テレビ取材が無理なら、長谷氏が回想した著書から引用してでも、より立体的な赤塚像を描けただろう。
  • 伝説化が着々と進行している感のある「赤塚論」も、そろそろ作品論と作家論とにきっちり分けながら議論を進めないといけない時期にきていると思った。「大和郡山時代の経験」が「おそ松くん」を作った、と言われてもそこで終わってしまう。だってそれだけのワケがないから。