「あれはウソです、全部ウソです!」

  • 先日、急に思い出した言葉なのだが、ある市民運動グループ(今となっては何のグループだったかさえも忘れた)があり、彼らが取り組んでいるある問題で何らかのマスコミ報道がなされ、それがどうやら事態の事実に反する内容だったらしく、その報道に激怒した、ある熱心な活動家の女性が作ったビラのタイトルが、表題の言葉である。
  • ビラ作成者の側のほとばしる情熱と怒りのエネルギーに比べて、タイトルを見た側の意味不明な反応がこれほどまでに対照的なビラを、私は今まで見たことがなかった。これをビラのタイトルにしてしまったその活動家は、ビラというものが不特定に配布されることを忘れてしまったのだろうか。いや、そうではないだろう。「自分が一番訴えたいこと」を表題にすることが正しいのだと、素朴に信じていたからに違いない。そうでなければ、あんな思い切った(あるいは、何が何だか分からない)タイトルは思い付かない。
  • 「パブリックな言葉」を操るには、多少の訓練を要する。その活動家は大学生かあるいは卒業後だったかもしれないが、残念ながらその訓練を受ける機会に恵まれなかったのだろうと推察する。社会に出るまでに学ぶべき論理の技法を学べている大学生は意外に少ないのではないかと思った話だった。