(2/15)「マルクスは風土を論じている」?

  • 朝5時起き。最近はずっとそう。とりあえず5時には自然に目が覚める。毎朝の習慣になっている国際ニュースを見てから朝食。
  • 今日は朝から午後にある準備。和辻哲郎の『風土』に登場する、マルクスの国民規定や風土規定の典拠についての問い合わせに答えるためである。
  • 『風土』には、マルクスが編集長を務めていた『新ライン新聞』(1848-49)の国民に関する諸論文の中にそのような記述があると和辻は書いている。しかし、『新ライン新聞』の論文のうち民族(国民)に言及している箇所を総ざらえしても、和辻の書いているような表現が見つけられない。これはどうしてか、という問題である。
  • これにはいくつかの仮説が立てられる。
  1. 和辻が必ずしもマルクスを熱心に読んでいたという記録は残されていない(ヘーゲルの本は読んでいた)。だから、何らかの研究書から孫引きしたのではないかという「タネ本」説
  2. 和辻はマルクスの文献から抜粋したのだが、当時の日本のマルクス文献の出版事情が理由で、『新ライン新聞』の論文ではないのにそう間違って伝えられたために、私たちが見つけられないのではないかという「出版物の誤記」説
  3. 最後は、単に和辻が勘違いをして(本当は違う文献なのに)『新ライン新聞』の論文の中にあると書いてしまった、という「勘違い」説
  • 当日の到達点としては、私が当初目を付けた、二番目の理由に近い「改造社版邦訳全集が誤記した」説は可能性が低いことが分かった。改造社版『マルエン全集』の『新ライン新聞』の論文を収めた巻は1928年秋に出版されているが、和辻はマルクスの風土規定についての箇所を同時期に執筆したと書いているからである。もちろん、メーリングが編集した『マルエン全集』はもっと以前に出版されている。ただ、仮説1で書いたように、わざわざ和辻がドイツ語の原書を入手し、調べて読むだろうか、という疑問が残る。
  • その日の夕方、大学図書館で追加の資料検索を行った。帰宅後、偶然だが三重短大の南有哲(みなみ ありさと)先生からお贈り頂いた先生の単著が届いていた。