待望の民族論集、ついに出る

  • 南 有哲著『民族の理論』文理閣、2500円+税)。
  • エンゲルスの民族論、バウアーとレーニンとの民族政策論の対立、スターリンの民族定義などを題材にして、「東西冷戦の終結」の名の下にいわば「放置」されてきたこれらの問題にふたたびメスを入れ、一定の理論的決着に成功している。
  • 民族自決」や民族概念とその本質について、このような刺激的な議論を提示できる若手研究者(私より四歳年上)がいたのかと、全国の研究者、特にマルクス主義の民族論に関心を持たれていた諸先輩方は驚嘆されるかもしれない。
  • 私がヘーゲルの民族概念を読む時はたえず先生の所説を参考にさせて頂いていた。私の僅かばかりの論考ですでに触れていたが、ここで改めて御礼を申し上げたい。
  • ついでに触れておくと、南先生は環境倫理の議論でも、興味深く刺激的な論文を多数発表されている。こちらも一刻も早い単行本化を待望している。