3月下旬のドキュメンタリーから

  • 番組数は少なかったが、NHK世界遺産スペシャル「記憶の遺産」(3月29日放送)、NNNドキュメント'08「銃乱射」(3月30日放送)、NHKスペシャル「名ばかり管理職」(3月31日放送)は、いずれもすぐれた番組だった。
  • 「記憶の遺産」とは、アウシュヴィッツヒロシマなどの人類史的な惨状を記憶にとどめるための「遺産」である。六十数年前に「強制収容所」で特定の人間の「絶滅」がどのように行われ、また「原子爆弾」で大量殺人がなされたのかを後世の人間が「記憶」することは、広い意味で人類にとっての「責任」であろう。もし私が平和や戦争についての講義を担当したならば、「記憶の遺産」のことはぜひ伝えたい。
  • 「銃乱射」。この番組では、昨年末の佐世保の銃乱射事件を中心に、警察の銃規制の遅れに焦点を当てている。あなたの近所に、銃所持を許可された人間が「いつ発砲するか分からない」挙動を繰り返していたら、どうする?
  • 名ばかり管理職」とは、就職後ほどなく(入社後数ヶ月の例もある)管理職の名前だけを与え、管理職なのに現場を仕切る権限は与えられず、しかし管理職だからと残業代は支払われず、結果労働時間が増えて賃金は下がるという「管理している実体がない管理職」労働者のことである。「名ばかり管理職」にさせられたために起こった過労死や病気が次々起こっている現状を番組ではリポートしている。この番組の面白かったところは、指摘を受けた企業の側が「これが問題扱いされるとは考えてもいなかった」と受け止めているのをリアルに映していたことだ。日本が労働関係法規で「法治国家」になるための道程は険しい。