(1/20)チェを見たか

  • 今日は火曜日、TOHOシネマズのシネマイレージデーで、会員は1300円で映画を見られる日。朝から一人で映画を見に行った。ソダーバーグ監督「チェ28歳の革命」。上映前にパンフを買う。
  • 会場は三分の一ほど埋まっていて、年配の観客も多かったが、私の右隣のおばさんは長い時間寝息を立てて眠っていたし、数組の観客は上映中に帰ってしまった。革命軍事闘争の戦闘と日常というのは、ハリウッド風な展開を期待した観客にはとんでもなく退屈だったかもしれない。でも、私にとってはめちゃくちゃ面白い映画だった。二時間以上ある映画だが、私にとっては革命の成功まで三時間かけて描いても十分楽しめただろう。以下、思い付くままいくつか感想を書きたい。
  • 映画の中では、革命の渦中にいながら兵士への教育と倫理に厳しかったゲバラの姿が描かれている。1964年の国連での演説を何度も交互に挿入しながら、ゲバラによる革命の「論理」を提示している。なぜキューバ解放が必要だったのか、なぜ軍事闘争でなければならなかったのか。その提示が、なぜ彼が突然キューバを去ってしまったのか、その理由を知るヒントになっている。キューバ革命に身を捧げながらも、どこかで自分を客観的に突き放したように見ている意識が主人公のゲバラに伺えるのは、(主人公の立場は違うが)ウォーレン・ベイティ「レッズ」、あるいは「アラビアのロレンス」を思い出させた。
  • また、フィデルカストロ)とゲバラの革命闘争に対するスタンスの微妙な違いも描いている。一言で言えば、フィデルの方が「政治家」だということだ。都市部の労働者の闘争や他党派との折り合いもつけてまとめていくのは、いつもフィデルである(そのように映画では描いている)。ゲバラの方が目的達成のための「純粋さ」を手放しておらず、その意味では「青い」のかもしれない。その他、フィデルが革命前からカリスマ的指導者として現地の農民に名声を得ていた様子や、革命軍に参加する農民たちの実態も細かく描かれている。
  • この映画はアメリカでは不人気だそうだが、描き方を見ていればそれも当然で、最初から最後まで、アメリカとアメリカのマスコミは悪役である。今も革命キューバ建国の「論理」は認めがたいのだろう。ただ、この映画の重要な点は、その「論理」をある程度突き放して描いている点である。この「論理」を否定するのは自由だが、しかしあの当時、あのキューバを解放するためにはどういう方法がありえたのかも考えねばならない。これは今のベネズエラボリビア、ブラジルなどの問題でもあるのかもしれないが。
  • 私の評価は5ブラボーである。もう一度お金を払って見ても構わない。ただ、今度は隣の客が寝息を立てていない場所で見たい。