ちょっと浅すぎないか(「ザ・ライバル」)

  • 昨夜10時からのドラマとドキュメンタリーの二部構成で放送された「ザ・ライバル」(NHK総合)。昭和34年の同じ日に日本初の週刊漫画誌小学館(「週刊少年サンデー」)と講談社(「週刊少年マガジン」)から発売され、その後の世相や子ども文化の歴史と絡めて週刊漫画誌の歴史を追った番組。関連のドキュメンタリー(手塚論や赤塚論、「トキワ荘」など)を何度も手掛けてきたNHKであれば、この程度の企画は軽々と組み立てられそうだ。今回は角度を変えて「日本初の週刊漫画誌の同時創刊から50年」で作られたのだろう。企画自体はすんなりできたように見える。
  • せっかく一時間半もかけたのに、あの情報の浅さ、分析の足り無さは何だろう。取材ディレクターが悪いのか、プロデューサーの問題か、それともドラマ部門の芝居の内容の無さか。赤塚の長年のブレーンだった長谷邦夫氏は「つまんないミニドラマだったね。」とバッサリだった。
  • どういう経緯の結果、あんな水のようなカレーになってしまったのかは分からないが、この番組の視聴者には、長年NHKマンガ関係のドキュメンタリーを見てきた人だっているのだから、もっとテーマを絞って(たとえば創刊決定から第1号発刊まで、とか)さまざまな準備や攻防戦を描けば、ドラマだけで一時間半は行けたんじゃないだろうか。それだけじゃなく、「巨人の星」にしたって、「あしたのジョー」にしたって、「『天才バカボン』サンデー引き抜き事件」にしたって、もっと掘り下げられる話は山のようにあるのに、さらさらっとスルーしていくという、贅沢というかもったいない番組作りをしている。
  • 肝心のドラマは、二人の主役人気役者にギャラを持って行かれたのか、セットと言い脇役と言い、いかにもチープになってしまった。編集部のシーンでは、忙しそうに仕事する編集部員たちの様子が、ちっとも忙しそうに見えない。ガヤガヤした効果音を入れているのが丸わかりで、むしろ画からは静けさすら感じた。また、ちょい役で何人もの有名人が半ば「カメオ」で出演しているが、それが何の意味も果たしていないのが内容上邪魔になっている(喫茶店のウェイトレスをしていた鈴木早智子は何の意味があってカメラ目線をする?)。その結果、合間合間に入っている当時の証言者の皆さんのコメントから、「時代の証言」という重みを消してしまった。まったくもったいない番組だった。
  • そもそも二つの伝統あるマンガ雑誌の50年の歴史を振り返るために、一時間半の放送枠というのが失礼な話だ。「シェ〜〜!ミーのすべてを話すのに、一時間半では無理ざんす!」