三重短の講義を終えて

  • 三重短期大学で担当してもう5年になる「社会思想史」の講義が、昨日で全日程を終えた。
  • 今期の年度テーマとして「社会思想と貧困」を設定したら、受講学生数が昨年のほぼ2倍になった。予定していた教室では入りきらず、大教室へ変更になったほどだ。
  • そもそも「社会思想」が学問として扱われるようになったのは、資本主義社会における貧困が一つの契機になっていることは間違いないわけで、今まさに「社会思想」として政治思想や倫理思想を読み直すことは、一定の意義があると思われるし、学生たちも意義を感じてくれたのだろう。
  • この短大は公立(津市立)である。校舎やグラウンドなどの設備は、私立に比べれば充実しているとは言いがたい。教員用の印刷機は機種が古く、よく壊れる(苦笑)。公立の相対的な学費の安さから、経済的な理由で進学している学生が一定数いる。短大なので女子が割合としては多数派であるが、男子も結構通っている。何より驚かされるのは、学生たちの勉学態度の熱心さである。逆にこちらが毎週力を与えてもらっているほどだ。徹夜明けでどんなに眠くても、教壇に立てば学生のまなざしに気持ちが奮い立つ。
  • 近年、自治体によっては大学存続に消極的な首長もいるようだ。大赤字の中、教育機関を運営するのは大変なのだろう。それは同情しないでもない。しかし、この短大で学生の熱意に直接触れていると、地元の学生の貴重な進学の機会を保障している津市は、きわめて有意義な税金の使い方をしていると感じる。「大学へ進みたかったので、(家の家計が苦しく)ここがなければ高卒で仕事を探さなければならなかった」という声を聞くたびに、まさに「公」がやるべき仕事じゃないか、と思うのである。