竹熊健太郎著『篦棒な人々』(河出文庫,2007年)より、康芳夫の言葉

  • 印象に残った言葉を引用する。82-83ページ。湾岸戦争に反対する反戦署名問題について。

あのとき俺は柄谷行人に、バカなことはやめなさいといったんだよ。なぜかというとね。まあ柄谷君がポストモダニストかどうかは別にして、浅田彰も含めて、一応それを標榜しているわけでしょう。でもポストモダニストを名乗る以上、あんなことやったら絶対矛盾の自己同一になって馬脚をあらわすぞと。僕は声明を出したこと自体を非難するつもりはまったくないんだよ。そうじゃなくて、彼らはそもそも、ある特定の政治的・社会的立場から逸脱するという方向で思想を展開していたわけでしょ?なのにあそこで徒党を組んでスタンドポイントを表明したっていうことは、絶対矛盾の自己同一ではないかと。頭隠してケツ隠さずというやつだ。だってそうじゃないですか。とくに浅田に関しては一番いえる。ポストモダニズムは一見政治的立場とは無縁のようにふるまっているけれど、どんな人間にも必ず政治的立場があるんですよ。脱イデオロギーの思想なんて、そんなものはありえないんだ。