香西秀信『反論の技術−その意義と訓練方法−』(明治図書、1995年)57-58ページより

  • 下に引用したのと別にもう一箇所、心に残った言葉があったので紹介したい。

レトリックは確かに悪用されることがある。が、大抵の場合、悪用されるほどには上達しないこともまた事実である。悪用することは、正しく使うことよりもはるかに難しく、より高度の技巧を必要とする。国語の時間に議論の方法を教えたくらいでそんな能力が身につくかどうかは、少し考えれば分かるはずだ。たかがディベートを教えるのに、「生徒が詭弁を使うことのないように」などといった心配をする人は、自分の教育能力を度外れに自惚れているのである。