(8/30,31)院生たちの研究を読む

  • 先週のことだが、我が出身大学院の哲学専攻院生が主催して毎年恒例の合同研究発表会が開かれた。哲学、倫理学、比較宗教学などの院生が修士論文の中間発表的な素材で研究発表を行う場である。私とW氏(いつもの)は、この時期になるたびにいつも、「昔はこういう場がなかったのに、今の院生たちは好条件で研究ができているのはいいことだ」などと、長老のようなことを言っている。
  • ただ、いつも残念だなぁと思うことは、発表者にどん欲さが足りない気がすることだ。せっかくの機会なのだから、Dの院生や、私たちのような博士修了者の非常勤講師が何人も来ているのだから、自分の論文がどうすれば良くなるかをもっと聞きなさいよ、と思う。修士課程の院生たちは、先生方の助言に耳を傾けるのが精一杯、という感じになってしまう者が多い。
  • 修士論文の提出までもう四ヶ月もない。先生に最終提出前に見てもらう期間を数週間取ったとして、残された期間は三ヶ月と少々。中間段階で色々と駄目出しを受けた者ほど、これから進めなければならない準備の膨大さを想像して、途方に暮れるのかもしれない。次は何の先行研究を読めばいいのか、次はどの先生の研究書を読めばいいのかと、頭を悩ませるのかもしれない。
  • しかし修士論文までであれば、多くの場合で不足しているのは「主な対象にしている文献の読み込み」である。「読み込み」とは単に読むだけではなく、読んだ結果として、分析対象とする章や節の限定や、内部での議論の特定などを含むだろう。とにかくターゲットにした文献を貴方が読んだ結果を、読者は知りたいのである。その「読み」が活字に現れて初めて、先行研究と比べてどこに分析や解釈の新しさがあるのか、観点や方法の相違があるのかを読者は知ることができる。
  • 修士課程はまだ講義も多い。バイトに忙しい者も居るだろう。就活を同時並行で進めている者もいるだろう。だったらなおさら、とりあえず「先行研究インデックス」作りは脇に置いて、メインターゲット攻略に精力を傾注しよう。
  • 先行研究調べを先にがんばってしまう学生って、相手のことを知る前に「恋愛マニュアル」「血液型ハンドブック」などを読みあさらないと気が済まないのと似ているのだろうか、とふと思った。ここは余計な話。