(9/10)高校で死刑制度について考える

  • 今週も高校でディベート準備のアドバイスに入る。今回初めての大会なので、今ひとつ自分の役割を認識できていない生徒が多いが、とりあえず一度やってみれば何が足りないかは見えてくるだろう。
  • 今回のテーマは「日本の死刑制度は廃止すべきか」。このディベートに向けて、6月に死刑制度についての意見表明発表会を実施し、その内容を原稿用紙3枚に要約する、という実践を行った。そして今回のディベート大会。何を議論すべきかはある程度頭に入っているので、今は議論の取捨選択の難しさを体験中である。
  • ディベート」指導で注意すべきは、生徒たちの自由な思考を妨害しないことである。大事なことは、死刑制度について、なぜこれほどまでに大の大人たちの意見が分かれているのか、生徒たちがその詳細を知ることだろう。そうすれば、生徒たちがこれまで持っていた立場(廃止or存置)がより強固になるか、あるいはすっかり反転してしまうか、いずれにせよ自分のオピニオンを強める体験ができるだろう。この(造語であるが)「オピニオン体験」は、「アハ!」とは違う脳のトレーニングになることは間違いない。
  • 他の学校ディベートでもそうだろうが、今回の授業で初めて死刑制度について深く考えた生徒が殆どである。私たちは憲法で「善く生きられる」保障をしてもらいながら、同時に合法的に公権力に命を奪われる可能性(死刑)がある社会に生きている。このことについて、高校生ならば一度、真剣に考える機会を持った方が良いのではないか、と改めて思った。若くして主人公が亡くなる映画やドラマで「命の大切さ」を知るのもいいが、現実の生活の中で自分たちの「生と死」がどういう制度の下におかれているのかを知る方が重要だと思うからだ。
  • 個人的関心事の話だが、私自身がこの授業の準備過程で知った「死刑制度廃止論VS存置論」の論点整理をしてみたいという衝動に駆られている。高橋昌一郎『哲学ディベート』(NHKブックス)の中にも死刑制度についてディベート的に論点整理をしていたが、より幅広く廃止論と存置論の根拠をリストアップし、その論理を整理しておくのも、この問題についての関心を広げるために有益ではないかという気がしている。もっとも、こういう問題は法学や社会学の専門家がすでに著作化していて、それを私が知らないだけかもしれないが。